【ネタバレあり】映画「ゆれる」感想・レビュー

Netflixにて視聴。一度見たことがありましたがもう一度観たくなり、視聴。

あらすじ

東京でカメラマンとして成功している猛(オダギリジョー)は母の一周忌で帰省する。彼は実家のガソリンスタンドを継いだ独身の兄の稔(香川照之)や、そこで働く幼なじみの智恵子(真木よう子)と再会し、3人で近くの渓谷に行くことにする。猛が単独行動している間に、稔と渓谷にかかる吊り橋の上にいた智恵子が転落する。

監督:西川美和

出演:オダギリジョー、香川照之、真木よう子

公開:2006年

評価(5点満点)

総合おすすめ度:☆☆☆☆

ストーリー  :☆☆☆☆☆

キャラクター :☆☆☆☆☆

音楽     :☆☆☆☆

再度見たい感 :☆☆☆☆

総合的な感想

※以下、ネタバレを含むため、未視聴の方はご注意ください。

兄が智恵子を橋から落としたのか、はたまた事故だったのか。約2時間のストーリーの中で最後まで分かりません。ここに視聴者と猛の感情は揺れます。決して軽いテーマでは無いですが描写自体が重々しくなく、観やすいが深い、珍しい映画となっています。

兄弟の関係性

東京で仕事を成功させているイケメン弟と、地元でパッとしない仕事をしている兄、わかりやすい関係に見えますが物語を通して、細いが強い信頼関係、その一方での嫉妬などが垣間見えます。

この微妙な心境の描写・表現は兄役の香川照之氏の演技無しでは語れません。香川照之ファンでこの映画観ていない人がいましたら、すぐに観ましょう。怖く、寂しく、脆く、素晴らしいキャラクターを演じています。

またオダギリジョー演じる弟の猛も、感情がゆれる様を見事に演じきっており、この二人の配役は「必然」に感じられるほど物語に生きています。

ラストシーン

事故があった後から今まで真面目に我慢していた糸が切れ、性格が変わったようになってしまう兄をみて、ラスト前に猛が自分の見たこと(見たと思っていること)を正直に裁判で証言します。これをきっかけに兄は7年の懲役刑を受けますが、この時、兄を取り戻すためという猛の発言には嘘がないことがはっきりと分かります。

しかし7年後、ある子供時代に例の渓谷に行った時のビデオをみたきっかけで事故当時のことを思い出します。あれは事故で、兄は智恵子を一度は倒しましたが、その後手を差し出していました。このことに気づいた猛は兄へ申し訳ない気持ちと取り返しのない気持ちになったと想像できますが、その後出所した兄に会いに行きます。ちょうど兄と道路を挟んで再開し、兄が少し微笑んだところで物語はエンドロールとなります。

私なら自分の証言のせいで7年の懲役刑になった兄弟に顔向けできないと思いますが、この兄弟の関係性は表面上だけではない強さがありました。ラストの微笑みの意味については様々な憶測があるようですが、私のとしては純粋な再開を喜ぶ意味だったと思います。自分で突き落としたわけではないにせよ、兄は橋から智恵子が落ちるのを助けられず、またきっかけを自分で作ったこともあり、罪悪感に苛まれていたんでしょう。間違った証言とはいえ、罪を償う機会があったことに、もしかしたら感謝しているのではないでしょうか。

映画と音楽

この映画に音楽はあまり流れませんが、印象的に使われています。

オープニング、車を運転するシーンでファンキーなBGMがかかります。この映画のBGMがそういう趣向なのかと思ったがそうでは無く、ファンキーなBGMがかかるのは車シーンのみでした。物語はあまりにも静かにすすみますが、少し感情の流れがあるところで寄り添うように音楽が流れます。

何かの評論で「映画は音楽の奴隷になってはいけない」といった趣旨の言葉を目にしたことがあります。私としては例えば、感動させるために音楽を入れたり、悲しくさせるために、ハラハラさせるために音楽を入れるという安直なBGMの挿入がそれにあたるのだと理解しています。これは好みでしょうが、音楽の力で物語の感動度を底上げする意図が見えると、一気に冷めます。そしてそういう演出って、現代映画・ドラマでは多いですよね。そういったものが苦手な私としては、本作の自然な音楽は好きでした。

おわりに

邦画の傑作といってもよいと思います。実際、カンヌ国際映画祭にも出展しているようです。あらすじを見ると重いテーマに見えますが謎が最後まで残されていることもあり、最後まで飽きずに観ることが出来ます。おすすめの映画です。

以上になります。

こんな感じで、映画を中心にゆるい感想を載せていっていますので「参考になった」「感想を共有できた」という方は是非ほかのレビューも観ていって下さい。

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